お葬式のあと、当家の代表の方が「故人、生前中はたいへんお世話になりまし た。…」と参列の方々に御礼を述べられ裂ます。
この御礼のことばについて、ある御門徒さんから次のような質問をうけました。
『生前中というのは生まれる前という字を書く。生まれる前にお世話になったというのは、なんカ、おかしい。生きていた時にお世話になったのだから、たとえば、存命中といった方がいいのではないか。そもそも、生まれる前はお世話になりましたということの意味がわからない。』と…。
生まれる前はお世話になりましたというのは、一般的には理解しがたい言い回しですが、仏さまの教えの中で受け止めてみたいと思います。
人間として生を受けることを、生まれるといいますが、仏教では、肉体が滅し、お浄土でほとけさまに成ることもまた、生まれるといいます。
生前中とは、お浄土に生まれる前、つまり、御門徒さんが指摘されたとおり、存命中ということなのです。ただ、御礼の際、存命中とは言わず、生前中と言うことの意味を、お葬式という厳粛な仏事の中でしっかりと受1ナ止めてみたいと思います。
わたしは、『故人生前中はたいへんお世話になりました。…』ということばを、次のように受け止めています。
『ともに娑婆の苦楽をともにしてきましたが、故人は尊い一生を終えました。残念なことではありますが、でも、臨終のそのときに、阿弥陀様の願いの中で確カ、にお浄土にお生まれになり、今は仏さまに成っておられます。これからは、仏さまとして、必ず私たちを慈しみのおこころで見守ってくださることと思います。
生前中はたいへんお世話になりました。』と・・・。
合掌
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