ここでは、住職とその仲間のお寺で運営している「テレホン法話」を掲載しています。法話は一週間ごとに変わっていきます。

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『 あなかしこ、あなかしこ 』

  大野町 西光寺   野村 了嗣 師


 それは門徒さんの法事にお参りした時のことでした。まだ小学校へ上がる前の坊やが座敷の中を走り回っています。小さい子どもはとにかくお客さんが多いのがとても嬉しいのです。そして「あなかしこ、あなかしこ」と口にしてははしゃぎ回っています。「これ・っ」としかりつけるおばあさんも本心でしかっていな
いことはすぐ解ります」こんな風景はどこにでもあることかもしれません。でもよく考えると、これってとてもすごいもっと驚き感心してイイコトなのです。
 例えばあなたがイギリスヘ旅行して何処かのご家庭を訪ねたとしましょう。もしそこで、年端もいかない子どもがシェイク.スピアを口ずさみながら走り回っているところをご覧になったらどう思われますか。もちろんそれがシェイクスピアだとあなたが解ることが肝心ですが。「いやこれはすごい、さすがイギリスだ」などときっと感心されることでしょう。
 実はこの「あなかしこ、あなかしこ」とはしゃぎ回る坊やもそれに匹敵するくらいすごいことをしているのです。正確に申し上げると、この坊やに「あなかしこ、あなかしこ」と口ずさませる背景・環境がとても素晴らしいのです。
 それはこの坊やの家庭に「あなかしこ、あ.なかしこ」と声を出して御文章を読む人が居るからこそ、こういう坊やが育っのです。もしこれが、「バカヤロウ」、「たわけ」、「サイテイ・・」などという言葉ばかり飛び交う家庭だったらどんな言葉をこの坊やは口ずさむのでしょう。
 蛇足ながら、この坊やは「聖人一流の御勧化のおもむきは信心をもって本とせられ候、そのゆえはもろもろの雑行をなげすてて…」と、御文章の「聖人一流章」の大半を暗記し諳(そら)んじていました。


                             合掌