『 おかみそり 』

 糸貫町 覚勝寺  鷲見 真人 師


 昨日、ある82才の方のお葬儀をつとめさせていただきました。実は、この方は、今から30年前に、京都のご本山にお参りされまして、おかみそりを受けておられた方でした。その時、いただかれた法名 釋智徳を大切にされ、ご家族の方も、このことを聞いておられました。無事、ご葬儀も終わり、火葬から帰られて、還骨のおつとめをさせていただきました。
 その最中のことです。私の後ろのほうから、すすりなきをしておられる様子がつたわってまいりました。あー、きっと、娘さんが、泣いておられるのだろうかなと思いつつ、読経を終わりました。そのあと、一言、お話させていただきました。
せっかくの機会でしたので、おかみそりについても、説明させていただいたことです。
 なくなられた、お母さんは、おかみそりを受けておられたとお聞きしました。これは、大変ありがたいことなのですよ。お母さんは、みなさんにお約束されたんですよ。いつか、自分が死ぬことがあっても、それでおしまい、永遠の別れにはなりません
よ。必ず、阿弥陀さまのお浄土に、仏さまの仲間に生まれさせていただきますからね
 と。そしたらすぐに、仏さまの働きをするために帰ってきますよ。あなたが気付くことができなくとも、いつもともにいますからね。だから、死んでおしまいになったとは思わないでくださいと。そんなお約束を、もう30年前にすでにしてくださったんで
すよ。ほんとうにありがたいことです。あるおかあさんが、娘さんにおっしゃられました。もし、あなたがお念仏してくれないのなら、あなたとの親子の関係は、この世かぎりと思ってね。でももし、あなたが、おかあさんのように、お念仏してくれるのなら、おかあさんが生まれるお浄土でまた会うことができますからねと、こんなお話をされたかたもありました。
  どうぞ皆様も、このようなご縁をいただかれておられるのですから、落ち着かれたら、是非、おかみそりをお受けになって下さい。手続きは簡単ですから。と、このようなお話をさせていただいたことです。
 終わってから、喪主様がおさがりをもってきてくださり、自分たちも、おかみそりを受けたいと思いますと、喜んでくださったことでした。

                              合掌