『 浄土真宗のお正月 』

 大野町 西光寺 野村 了嗣 師

  いささか季節はずれのお話ですが、お正月のことをお話させていただきます。
  私の住んでいる地域では、元旦は先ず我が家のお仏壇に家族そろってお参りをします。たいていお正信偈を読みますが、このとき現世利益和讃を読む習わしのお家もあります。お雑煮を食べて九時頃からお手次の寺院や地元の寺院へ「御年頭(おねんとう)」に出かけます。昔はこれがもっと早い時間だったそうです。お寺へ着くと先ず本堂にお参りして、次いで庫裏にてご院主(ごえん)さんと年始のあいさつを交わします。
  私のお寺では地区ごとに集まり揃って来られる所が数カ所あります。座敷で車座に座りお茶をすすりながら歓談します。その時に法事の確認や予約、報恩講の段取りの確認などもします。入れ替わり立ち替わり、そんなこんなでお昼を過ぎるとそれぞれのお正月となります。そうそう、早朝には本堂で元旦会をお勤めしやはりお正信偈をいっしょに読みます。
  こんなお話をすると、それでは温泉もハワイも行けないではないか・・とイヤな顔をされるお方もあることでしょう。しかし、まだまだ日本の大部分ではそれぞれの地域や家庭の伝統に則った(のっとった)お正月が営まれていることと思います。「お正月はハワイ」などと言うのは、行き場のない芸能人か旅行会社の宣伝で、一時期マスコミが煽った(あおった)のであたかも日本人はみんなそういうお正月を過ごしているかのように錯覚してしまっただけのことではないでしょうか。
  もっともバブル経済の崩壊後は、お正月にハワイ云々の話はあまり聞かなくなりました。それよりも景気の良い悪いに関わらず、日々の生活の精神的拠り所を何処に置いているのか、そんなところを見据えたお正月でありたいものです。
                               合掌