『 ちょっといいお話 』

 大野町 西光寺 野村 了嗣 師



 

 子供が通う中学の冬休みの宿題に、家族そろって冬休みに何をやったのか簡単なレポートを提出するものがありました。   題して『我が家の手作り冬休み』というものです。PTAの役員というご縁で、そのレポートをいくつか読ませていただきました。時候柄大掃除を取り上げているご家庭が多かったように記憶していますが、こんなものもありました。かいつまんでご紹介しますと、「我が家では大晦日のタ方と元日の朝には、家族そろってお仏壇にお参りしていっしょにお経を読みます。ぼくも早くもっと上手にお経を読めるようになりたいです。云々」というものでした。
  どこのご宗旨のご家庭かは知りません。しかしたいへん嬉しくほほえましく読ませていただきました。この宿題には審査も表彰もありませんが、個人的には大きな二重丸をあげたいくらいでした。
  この五〇年来の日本は、あたかも「勝って気まま」がキーワードであるかのような世相の印象があります。そして「自己虫」と呼ばれるほんとうに「身勝手」な人間がやたらと目に付く時代になりました。そんな現代の身勝手な世相を嘆く前に、また短絡的に戦後の教育が悪いなどと言う前に、何がこうした世相をもたらしたのか、先ず自らの生活姿勢を謙虚に振り返ることが必要なのではないでしようか。私は先の子供さんのレポートに「まだまだ捨てたものではない」という光を見た思いがしました。

                               合掌