『 しあわせ @ 』

 関市 光圓寺 日野 安晃 師


 元プロ野球選手の金村義明さんが、ある講演会で「うちの子をプ口にするためにはどうしたらいいか?という質問をする親が多くなつた。たしかに、今の時代、何千万という契約金や何億という年俸をみれば、苦労して大学出して就職させるよりもいい、と思うのか知らんが、今は親が子どもに夢を持たせるの
ではなく、親が子どもに夢を持ってしまうのですかねえ」と嘆いておられました。
 何が人生の目的で、どうなることが「しあわせ」なのか、親自身が誤解したまま諦めて、子どもに変な期待をかけてしまっているとすれば、こんな迷惑な話もないでしょう。
 ところで、「しあわせ」を漢宇でどう書きますか?おそらく幸福の「幸」の字を書く方がほとんどだとおもいます。ところが、辞書を
引きますと、くわしくは次回に譲りますが、仕事の「仕」に「合わせる」で「仕合せ」となっています(古い辞書では、これしかでて
きません)。「幸」の字の方は、海の幸、山の幸というように、自然からの贈り物・恵み、という意味が本来の使い方なのです。ところが、この飽食の時代にあっては、そんな敬度
な気持ちもどこへやら、うにやあわびなど海の幸盛り合わせセットなんて聞くと、いかにも高そうだな1と、お金でしか考えられなくなってしまいました。「幸」の字を使うようになったのが、まさか経済的な成功の延長線上にしか「しあわせ」を考えられなくなった結果という訳でもないのでしょうが、この錯覚が、実は不幸の始まりなのです。
 仏さまは、このことをよくご存知で、だからこそ、南無阿弥陀仏と私たち一人一人の本当の「仕合せ」を願わずにはおれないのです。

                               合掌