『 であい  』

 岐阜市 正蓮寺  鷲岡 護 師


 夜の柳ヶ瀬は、お酒を介して人と人がであう街です。艶やかなネオンもいいですが、今回は、もうひとつの柳ケ瀬、滋賀、福井県境にある柳ヶ瀬トンネルのお話です。
 滋賀の柳ヶ瀬は、古くは近江と北陸をつなぐ北国街道と若狭街道の分岐点で重要な関所の一つだったそうです。
 明治になると、米原と敦賀を結ぶ鉄道建設が計画され、大変な難エ事を経て、柳ヶ瀬には滋賀と福井を結ぶ長いトンネルが完成しました。これが北陸本線の前身ですが、長く、急勾配の柳ヶ瀬トンネルでは、蒸気機関車の悲惨な事故も起こり、「魔のトンネル」と疎(うと)まれるようになっていきます。戦後、新ルートとして、現在の北陸本線が開通したあとは、旧国鉄の代表的な赤字ローカル路線となり、昭和39年、鉄道としての使命を終えます。
  廃線のあと、柳ヶ瀬トンネルは、そのまま自動車道として利用されることになるのです。
 その柳ヶ瀬トンネルを通ったとき、自称、自分は霊感が強いという友人が突然、「寒い!」と言って震えだしました。何かイヤなもの、伝わってくるおどろおどろしいものがあるといって、震え、怯えていました。
 湿度が高く、暗くてカビくさいトンネルの中は、心地よい感じはしません。難工事、事故、廃線と決して明るい歴史があるわけでもなく、「魔のトンネル」とよばれたのも事実です。でも、だからといって、何か悪意があるかのように、不安に思うのは如何なものかと、その時は、友人を小馬鹿にしていました。
 しかし理由はどうあれ、多分友人が感じていたものは、それはそれで事実だったのでしょう。少なくとも友人は、得体の知れぬ不安を感じていたのです。
 親鸞聖人は闇の中、仏さまの慈しみのお心にであうことをよろこび、伝えて下さいました。
 娑婆の苦悩の中にあっても、阿弥陀仏の救いにであい、たしかな安心をいただきましょう。

                             合掌