『 おじいちゃんの孫でよかった 』

池田町 浄妙寺  野村 法宏 師


 夏の甲子園やオリンピックで日本中が世界中が沸き返った目も良い思い出となりました。
 夏の甲子園、北北海道代表の旭川北高校は山口県代表の岩国高校に六対三で敗れました。その旭川北高校のピッチャー岡久君の大会までの姿をテレビで紹介していました。
 甲子園に出発する日、岡久君はお仏壇に合掌をしています。「おじいちゃん、これから甲子園に行ってくるよ。勝っても負けても、僕のことをしっかりと見ておいてね」と、甲子園出場をおじいちゃんに感謝報告し、出かける挨拶をしましたと。おじいちゃんに野球の手ほどきを受け、苦しいときも辛いときも常に岡久君を支え続けたおじいちゃんだつたそうです。ちなみにこのお仏壇、浄土真宗本願寺派のお荘厳でした。
 試合後のインタビューが素晴らしかった。
「試合には負けてしまいましたが、おじいちゃんの孫でよかつたです」と、涙を拭きながらしっかりとした口調で話しました。
岡久君とおじいちゃんの尊いつながりを感じました。おじいちゃんはお元気な頃、おばあちゃんとお仏壇の前で、可愛いお孫さんを膝に抱き「あなたを私たちの孫として授かつてよかつたよ、どんなことがあってもあなたは私たちの孫なんですよ」と、言い続けなさったのでしょう。そのお心は、世間はいろいろな物差しであなたをみるでしょう、しかし、どんな見方をされようとも、私たちのあなたを孫として授かった喜びは変わりませんよ、ということではないでしようか。
 そのお心が、お仏壇の前でおじいちゃんからお孫さんへ相続されたがゆえに、「試合には負けてしまいましたが、おじいちゃんの孫でよかつたです」という安心と喜びの言葉となつたに違いないことでしょう。

                             合掌