ここでは、住職とその仲間のお寺で運営している「テレホン法話」を掲載しています。法話は一週間ごとに変わっていきます。

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『 大きな乗り物 』

  大垣市 縁覚寺   楠 真  師


 私たちの宗教である仏教には、ご承知のとおり多くの宗派があります。その依り所とするお経の違いによって宗派が出来たのですが、日本の多くの仏教各派はだいたい大乗仏教に分類されます。お釈迦様が亡くなってから500年ほどの後、出家の修行者だけの教団ではなく、ひろく在家の信者をも含めた新しい仏教運動が起こります。この運動は、出家と在家の違いを超えて、共に命在るものを慈しみ、お互いが支えあって生活するという慈悲の実践を促す運動でした。この運動の担い手は、それまでの出家修行者だけの仏教を乗物に例えれば小さな乗物、小乗だとして、自分たちが起こした新しい仏教運動を大きな乗物、大乗仏教と呼び習わしたのです。この流れがアフガンやチベット、中国や朝鮮を通って日本まで伝わったのです。
 さて、この大乗仏教の特色である出家と在家の立場を超えて、共に慈悲の実践に励むということは、お釈迦様の時代には無かったのかというと、実は阿難尊者がその実践者であったようです。阿難尊者はお釈迦様の弟子の中でも、多聞第一、つまりお釈迦様の説法を一番多く聞いたと誰もが認める方でした。何故かと言うと、阿難尊者はお釈迦様の従兄弟になる人で、常にお釈迦様に寄り添って身の回りのお世話をし、自ずと説法を誰よりも多く聴聞されたのでした。しかしお釈迦様が生きておられる間に悟りを開くことは出来ず、他の仏弟子より修行が遅れて、長老の弟子より修行を怠けていると非難されていました。でも、このことには訳があったのです。
 阿難尊者は、お釈迦様の生活のお世話をしながら、多くの在家の信者さんとも親しく交わった方でした。仏教の教えを一般杜会に伝え、出家の修行者と在家信者との架け橋となって、教団の維持発展に尽力されていたのでした。出家・在家を問わず杜会性を保ちながら仏法をひたすら聴聞された阿難尊者は、後に大乗仏教の教えを受けて、念仏を喜ばさせていただく私たちのお手本のような方だと言えるのです。




                             合掌