ここでは、住職とその仲間のお寺で運営している「テレホン法話」を掲載しています。法話は一週間ごとに変わっていきます。

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『 怨親平等 その1 』

大野町 西光寺   野村 了嗣 師

 

 暑い夏を迎えると、テレビの何処からかあの『さとうきび畑由の歌が聞こえてきそうな気がします。私の世代にとっては懐かしい森山良子の歌です。カラオケで歌えば7分以上かかりよほど上手でないとひんしゅくを買います。何度も繰り返される「夏の日差し〜の中で…」という歌詞に森山良子の平和を願う心が込められている、そんな気がします。
 さて、私は今立春とは言え一面の雪景色を眺めながらこの原稿を書いています。冬にいて夏を想像することが難しいように、平和の中で戦乱の世を思うことはきっと難しいのだろうと思います。まして戦後生まれの私にとって。
 先の大戦で、私の寺のご門徒からは八十名を越す戦死者がでました。全世界では犠牲者が七千万人とも言われています。五十回忌は既に遠くなりましたが、日本国内のみならず世界中でまだ先の戦争の傷が癒されていないことは、日本の首相の靖国神社参拝をめぐってのアジア諸国からの反発などからも思い起こされます。
 時代が遡りますが、鎌倉時代には『蒙古来襲』、いわゆる『元寇』がありました。侵略され迎え撃った日本はもとより来襲した蒙古軍にも多くの戦死者が出ました。蒙古軍の侵入経路となった対馬や壱岐では先の大戦での沖縄のように、全島殱滅に近い島民の犠牲者がでました。その凄まじかったことは今でも小さい子どもが泣くと、「ムクリが来るぞ」と言って子どもを黙らせるという逸話が西日本には伝えられていることからも窺い(うかがい)知ることができます。ムクリとは蒙古のことです。
 そんな難儀をしながらも、この蒙古来襲の後、時の鎌倉幕府執権北条時宗は鎌倉に日本・蒙古・高麗などこの戦争での全戦死者を追悼供養するために円覚寺を建立しました。ここからは次週のご縁でお話させていただきます。



                               合掌