ここでは、住職とその仲間のお寺で運営している「テレホン法話」を掲載しています。法話は一週間ごとに変わっていきます。

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『 靖国からの還浄A 』

瑞穂市 善徳寺   藤村 真樹 師

 

 昭和十六年、中国でのことでした。
 私は、五・六人の先輩とともに、敗残兵の討伐にでかけました。河川敷のヨシの中に女性や子どもが二十人程逃げ込んでいました。すると突然、一年先輩の上等兵が軽機関銃を発砲した。悲鳴があがった。地獄の光景だった。あまりのことに私は思わず「何でこんなことを」と叫んだ。上等兵は言った。「むかむかしたでや」でたらめだった。虐殺、強姦、放火、強奪は、日常的だった。
 壕の中で泣き声をあげたために殺された沖縄の赤ん坊、政府がとっくに終戦を決断していた時期に日の丸の鉢巻きをしめて飛び立った特攻兵は、神だ。しかし、本当の戦争犠牲者は、アジアの人たちであって、救済すべきはアジアの人々だ。私は、戦後軍人恩給の受け取りを拒否してきた。自分が恩給をもらう事に強い抵抗感があった。
 首相は、靖国神社に参拝する前に、まずアジアの死者を悼み、沖縄の赤ん坊を悼むべきだ。戦後、軍人恩給を拒否し続けてきた 元陸軍軍曹 尾下大造さん八十三歳の言葉です。
 先の戦争でのアジアの人たちの死傷者は、三千万人と言われます。内、靖国神社に祀られた方は、二百十万人です。
 あの戦争で犠牲になった方々全ての痛み、無念を受けとめる時、国と国との枠組みを超え、敵・味方の選別をせず、軍人・民間人・住民としての立場を超えて、為さねばならないものがあるはずです。
 理不尽な死に方をなされた大勢の戦争犠牲者、その犠牲の上で「英霊か戦争犯罪人」とか「祀る祀らない」ですったもんだする姿は、憤りを越えて滑稽でさえあります。
 人の世は、地獄の上の花見かな
犠牲になった方の地獄を忘れてはなりません。  


                               合掌