ここでは、住職とその仲間のお寺で運営している「テレホン法話」を掲載しています。法話は一週間ごとに変わっていきます。

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『 世間虚仮唯物是真 』

瑞穂市 善徳寺  藤村 真樹 師

 「いつまで続くか分からない、先の見えない苦しみほど辛いものはないですねぇ、御院さん。」
 御主人が倒れられ、数年の歳月をたった一人で面倒を見ておられる奥さんの言葉です。昔に比べ、医療・福祉・介護制度が充実したと言われる現在でも、まだまだ多くの方が苦悩されています。
 この奥さんも御自身が70歳の高齢を迎えたにもかかわらず、ほぼ寝たきり状態でわずかづつ痴呆が進んできた御主人のために、懸命にそれこそ身を粉にしてきました。
 朝・昼・夜の食事の世話に始まり、下の世話はもちろん、体を拭いたり、着替えをさえたり、車椅子に乗せて病院まで付き添ったり、そのような生活が毎日続き、面倒を見ているこっちの方が倒れたことが何度もあったそうです。
 「あと少し、もうちょっとの辛抱や。」と思えれば、頑張ってみようかなとも思うのでしょうが、それがない出口の見えない辛さはやりきれないものでしょう。
 「こんなはずではなかった。思い通りにいかない。」
聖徳太子の言葉として伝えられている「世間虚仮唯物是真」 。世の中や人生の中で一つも当てになるものは無い。ただ、仏様だけが真実、当てになるものである。人生どうでもいいと仰せられているのではありません。仏様に出逢って初めて、人生や世の中が生かされて行くという言葉です。
 いかんともしがたい現実の壁がのしかかる中、逃げ場を探し、すり抜ける道を求めるのも必要なときもあるのかもしれませんが 、「たった一人で戦うのではなく仏様と共に戦う道もあるのですよ。」と言われているのです。

                            合掌