ここでは、住職とその仲間のお寺で運営している「テレホン法話」を掲載しています。法話は一週間ごとに変わっていきます。

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『 厭離穢土(おんりえど) 
        欣求浄土(ごんぐじょうど) 』

瑞穂市 善徳寺  藤村 真樹 師

 九十の齢を超えたおばあちゃんが、
「目は見えへんし、耳はきこえんし、身体はお医者さんに診せてもなおらんし、何にもええことあらへん。あと10年も20年も生きとれるわけないなら、元気な今のうちに死ねんもんかなあ」
と仰られた後、「阿弥陀さまは、お浄土を建立されたとお経に書いてあるけど、死んでからしか行けないなら早よう死んでお浄土に行った方が、この世で苦しみながら待っとるよりええと違うかな」亡の世には、夢も希望もない。やりたい事も未練もない。ただ老いて、痴呆や寝たきりになり、家族に迷惑をかけながら死を待つだけならば、元気な今の内にポックリいきたいと思う心は、わからないでもありません。
 この世は地獄、あの世は極楽、……親鸞聖人が尊ばれた七人の高僧の一人である源信僧都が厭離穢土 欣求浄土 煩悩で穢れたこの世を厭い、浄土に生まれる事を願おうと申されています。
 思うようにならないこの世は諦めて、あの世の浄土に逃げだしましょうと申されたのではなく、まちがいなく浄土に生まれさせていただくこの私を知らされる時、どうにもならないこの世を遠避け、諦めるのでなく、厭おしく大切にする心が生じ、精一杯生きていこうという力が湧いてくるのです。
 浄土を求め慶ぶ…欣求浄土とは、将来への憧れや逃げ場でなく、不安と絶望しかないと思い込んでいた私が根底から転ぜられ、浄土によって今を生かされている慶びが生まれてくるのです。

                            合掌