ここでは、住職とその仲間のお寺で運営している「テレホン法話」を掲載しています。法話は一週間ごとに変わっていきます。

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『 世知辛い 』

岐阜市 正蓮寺  鷲岡 護 師

 

 Tさんがおまいりにいらっしゃいました。11暑いですねえ11と世間話。
「暑いので、朝早く草メ1」りをしていたら、パトカーが来る。何かあったんだろうかと思って、見ていたら、自分のところに来た。『朝早くから、草刈り機の音がうるさい。』という苦情があったらしい。かなわん。」と。
 Tさんの村は、少し前までは、全戸農家。田んぼと山しかない典型的な里の村でした。数年前、山裾を造成して、団地ができました。
「団地の人たちとはうまくやってる。特に若い人たちとは。田舎では当たり前の暮らしに、勝手な文句を言ってくるのは、いつも”定年後やってきた老夫婦”。田舎とわかっていて来たんだろうに…。」
ということらしいです。
 世知辛い世の中です。
 さて、「世知辛い」とは、『暮らしにくい。住みにくい。』という意味です。
 「世知」とは、『世渡りの知恵・世俗に生きる凡夫の知恵・世間の常識』のことで、仏教語です。「世知辛い」というのは、この『世渡りの知恵・世俗に生きる凡夫の知恵・世間の常識』を、意識しないではいられない状況ということで、「暮らしにくい。住みにくい。」という意味になったそうです。
 仏教では、ほとけさまを見ることができず、おみのりを聞くことができない境界(きょうがい)を、八難(はちなん)と言っています。そのひとつを『世智弁聡(せちべんそう)』と言います。世智、つまり世渡りの知恵に長けているばかりに、仏智、仏さまの智慧に遇うことができない人間の有様のことをさしています。
 世俗を離れて私たちの暮らしはありません。そんななか、おたがい、世俗を渡る「世知」ばかりに気をとられていないでしょうか。
 世知辛い世の中ではありますが、ほとけさまの智慧の光明は、つねに私たちを照らしてくださっています。お念仏申しましょう。



                               合掌