ここでは、住職とその仲間のお寺で運営している「テレホン法話」を掲載しています。法話は一週間ごとに変わっていきます。

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『 還相(げんそう) 』

本巣市  正尊寺    杉山 雲来

 

 寒さ厳しい冬の一月に、あるお宅へ七七日の参りに行ったときのことです。
 五〇年以上連れ添われたご主人を亡くされてまだ二週間、なんとも寂しそうにしておられたお婆さんから、お勤めが終わり帰りがけに、
「昨日庭でこんな季節はずれに大きなヘビを見ました・・・、私はヘビが大嫌いだけれどもお爺さんのことが思われて、その時はヘビに対する怖さはなく見とれていました。お爺さんとあのヘビは何か関係があるんでしょうか?」と、何とも不思議そうに尋ねられました。
 一瞬、どう答えようか・・・、昔なら即座に「仏さまとヘビは関係ありませんよ」と答えたに違いありません。しかし、お浄土の話をよく聴くようになり、自らも涅槃会では。お釈迦様が亡くなられるときの様子を描いた「涅槃図」のお話をしておりますと、お釈迦様の入滅を聞き付けて集まってくる多くの生き物の中にちゃんとヘビもいるのです。
 お浄土の世界では、すべてのいのちが光り輝いていると説かれていますが、私たちの目には好き嫌いというフィルターを通してしか見ることができず、愛しかったり恐れたりと分け隔てたりしながら生きています。
 「ご主人が仏さまの世界から、ヘビの姿をとって現れられたのかも知れませんね・・・」と、いうような話をしました。
 親鸞様はお浄土に生まれ行く往相と、お浄土から帰ってきて、私たちを悟りへと導く働きとなる「還相」が有るといわれました。
 この時のお婆さんが語られる姿の中に、先だって逝かれた方が、仏さまの働きとして還ってきておられる世界がちゃんとあるのだなぁと、しみじみ味わったことでした。



                            合掌