ここでは、住職とその仲間のお寺で運営していた「テレホン法話」を掲載しています。
現在、電話での法話聴聞は休止しています。

 

 

『 お稚児さん 』

本巣市  正尊寺    杉山雲来

本願寺のお寺では、親鸞(しんらん)さまや蓮如(れんにょ)さまの御遠忌(ごえんき)という、ご法事を50年ごとに勤めています。
たいてい、その御遠忌には普段の法要とは違って「庭儀ていぎ」、一般には稚児(ちご)行列をすることがあります。
正尊寺でも、今年の四月に親鸞聖人の750回大遠忌のご法要を勤めることになっていて、稚児行列の受付を始めました。


 そんななか、ご門徒の方から「子供の内に三回はお稚児に出しとかんとあかん聞いているが、何ででっしゃろ」と質問されました。
この地方では、このような伝承があり、あなたも御存知のことと思います。
どこのお寺でもお稚児さんは集まりすぎ困られるところが多いようです。私のお寺でも、門徒でもなく聞いたことの無い方から結構問い合わせがあり、門徒家庭の子どもさんの数をはるかかに超えた定員を設定しています。

 「お稚児」というのは、正しくは「天童子てんどうじ」といい、本来の意味は、発心して仏門に入ってはいるが、まだ出家していない子供のことです。
昔の高僧には身の回りで世話をする小姓がおり、これを童子あるいは稚児と呼んでいました。このようなことから、大法要でお坊様が「おねり」という行列を行なうとき、その介添の役として稚児が並ぶようになったようです。
 ここで大事なことは、形だけのようですが衣装を着、冠をつけ稚児として法要の行列に加わることは、一時でありますが仏門の仲間に入ることです。
人生いかなる時も阿弥陀仏(あみだぶつ)と共にあり、たしかな法と共に歩んでいることをうなずかせて頂く縁でもあります。
人生無常、歳老いて亡くなるとは限りません、小さいときから仏様と少しでも多くご縁を結ばせてやりたい、という願いから「三度はお稚児さんに出すように」と伝えられてきた先人の智恵でありましょう。
                                   合掌